作業療法士Q&A

うつ病などのこころの病気、会社側で気をつけることは?

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うつ病などのこころの病気を抱え、1年ほど休職していた社員が職場復帰することになった。受け入れる職場側として、なにか気をつけるべきことはあるのだろうか? 作業療法士の視点から答えます。

うつ病などのこころの病気、会社側で気をつけることは?

Q.

 一般企業の管理職をしております。うつ病などのこころの病気を抱え、1年ほど休職していた社員が職場復帰することになりました。受け入れる職場側として、なにか気をつけるべきことはありますでしょうか?

A.

 うつ病などのこころの病気は、体調が改善しても、再発することが珍しくないため、まず復職へ踏み出しやすいように、そして続けていけるように環境調整を図ることが重要になってきます。長期間に渡り、仕事を休んでいる場合も多く、ブランクがあるため、ソフトランディング(軽い仕事から、徐々に通常の仕事に戻ること)していけるような組み立てを図ることができるとよいでしょう。復職してすぐに、復職前と同じくらいの業務を課すと、休職時の環境とのギャップが大きく、体調に影響するリスクが高いため、業務の量や質、時間などの軽減を図ることが望ましいです。復職してしばらくは、職場環境に慣れ、仕事の感覚を取り戻す期間です。当面は、重い責任が伴うもの、納期がタイトなもの、交渉や折衝レベルの対人スキルが求められるものは避けましょう。「遅れを取り戻さなければならない」、「周りと同じようにやらないといけない」と焦る人もいますが、気持ちばかりが空回りしても体はついてきませんし、固めるべき足場も固まりません。また逆に、復職してもあまりやることがないと、時間を持てあまし、必要以上に周囲が気になってしまうことがあります。いずれの場合も、過負荷にならないように配慮しながら、しばらくはどのような仕事を、どのようにこなしていけばいいかを適宜、話し合い、確認しながら進めていけるとよいでしょう。

 職場のストレス要因で体調を崩した場合は、その要因を把握した上で、その要因が強く作用しないように調整を行う必要があります。本人と職場側で調整を図ることが難しい場合は、産業医や産業保健師など、第三者に入ってもらい話し合いましょう。自分の考えをうまく伝えられずに、一人で抱え込む人も多いため、本人が意識して自分の考えを周囲に伝えるよう心がけることとあわせて、職場側も適宜、体調や状態、業務状況などを確認する場をもつなどのサポートがあるとよいでしょう。

 本人とどう関わっていいかがわからない場合、病気の知識や理解が十分でないことが多いもの。上司など、特に本人と密に関わりがある人には病気の特性を伝えた上で、周りはどのようにサポートしていけばよいか、体調が揺らいだ場合、どのように対処を図ればよいかということを事前に話し合っておけると安心です。また、本人から配慮してもらいたいことがある場合、それらを聞いた上で、可能な範囲で取り入れられるとよいでしょう。

 なお、復職時、毎日の通勤や業務に耐えうる状態かどうかを確認することは欠かせません。生活のリズムが整っている、日中の時間にコンスタントに活動できる、負担感もなく周囲とコミュニケーションが図れる、仕事に必要な基礎能力(集中持続性、判断力、問題解決力など)が回復している、再発予防について考えられているなど、復職の準備ができているかを確認してください。もしその準備が十分でなければ、復職しても、再発するリスクが高まります。ただ、自宅で静養している環境で、それらを準備するのは容易ではないため、復職に向けたリハビリテーションであるリワーク(復職支援)でを活用するのもよいでしょう。リワークは、活動を通して復職に向けた準備・調整ができます。また、体調を崩し、つらい思いをしながらも体調を整え、復職という同じ目標に向かってやっていく仲間がいます。さらに、プログラムを通し、病気の特性や自分の傾向を知り、どう付き合っていけばよいかを学ぶことができます。そしてそれらの情報を職場と共有することで、環境調整に活かすこともできます。

■回答
NTT東日本関東病院 精神神経科 作業療法士 岡崎 渉