機関誌『日本作業療法士協会誌』

令和6年能登半島地震から1年 協会の支援を振り返る

この記事は、日本作業療法士協会誌 155号(2025年2月15日発行)のTOPICSのWeb版です。

  令和6年能登半島地震から1年以上が経過しました。本稿では、この災害に関連した災害対策本部の動き、本会による支援企画、石川県作業療法士会の現状とこれからを報告します。
  作業療法士は長崎県・雲仙普賢岳の火砕流災害、阪神淡路大震災、新潟中越地震・新潟中越沖地震、東日本大震災、熊本地震等、さまざまな災害で被災地に対して支援活動を積み重ねてきました。たとえば、仮設住宅の住居割り振りの際に以前の住居地域によるコミュニティ形成を提案してきたのは、阪神淡路大震災後の兵庫県作業療法士会でした。これは東日本大震災後、福島県いわき地区をはじめ、原発事故で大きな被害を受けた地域のコミュニティ再形成に受け継がれました。災害は起こってはほしくないものですが、作業療法(士)が被災地に対して一つひとつ真摯に活動してきた積み重ねが次の災害への備えにつながっていきます。これに鑑み、能登半島地震の災害支援で培ってきた活動を風化させることなく、かたちに残していくことが重要であると考えます。本稿が職能団体としてすべきこと、準備すべきことは何かを改めて問い直す契機にできれば幸いです。

災害対策本部についての報告

  2024年元日の能登半島地震――北陸三県や新潟県等、特に能登半島に関しては甚大な被害となったことは言うまでもありません。さらには、同年9月の能登半島で発生した集中豪雨が重なり、複合災害となりました。河川の氾濫、土砂災害が多発し、復旧がさらに遅れている現状で、今もなお、避難を余儀なくされている方も多くいらっしゃいます。改めまして、命を落とされた方々に哀悼の意を表しますとともに、被災地の皆様、関係者の皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。

災害対策本部の主な動き

  今回の能登半島地震では、本会は発災当日に災害対策本部を立ち上げ、対象となる会員・県作業療法士会へ安否確認等の対応をしました。並行して、一般社団法人日本災害リハビリテーション支援協会(JRAT)とは緊密に連携しながら、現地の支援活動への協力体制を整えてきました。ここでは、本会の災害対策本部による支援を報告します。
  本会は、前述のとおり発災当日に災害対策本部を立ち上げ、1月8日に第1回災害対策本部会議を開催しました。被害の大きかった地域の士会へ、初期対応支援金各 30 万円の拠出、会員の会費免除申請や支援金の募集等を決定しました。その後は、災害対策室・連絡調整室を設置し、石川県士会とのWeb会議を重ね、被災した会員、そして士会活動への支援を検討し、「被災経験のある士会員と石川県士会役員との情報交換会」、「石川県士会員向け説明会(災害支援)の運営サポート」「協会員向け相談窓口の設置」等の支援企画を、災害対策室員らとともに各種実行しました(具体的内容は後述)。

士会との対面による情報交換会

  石川県士会役員と災害対策本部員による対面の情報交換会(金沢)を開催しました。第1回(2024年3月31日)は、石川県士会からは東川哲朗会長以下6名、本会からは山本以下4名が出席しました。石川県士会からJRAT活動終了後の地域リハビリテーション活動への移行に向けた「復興リハビリテーション支援協議会(仮称)」の活動やこれに伴うリハビリテーション専門職3団体や他団体との調整状況等の現状と課題の共有があり、本会からは各種支援企画の進捗等を報告しました。第2回(2024年12月3日)は、石川県士会からは東川会長以下6名、本会からは山本以下2名が出席し、主な議題は、能登半島での復興リハビリテーションにおける石川県士会の作業療法士派遣の現状と課題等に加えて、輪島市・珠洲市では9月の豪雨災害により避難所が被災、ようやく新規避難所設営に至っているとの新たな被害状況についても報告がありました。本会からは、さらなる資金提供の準備があること、重複被災の会員の会費免除申請等について報告し、意見交換を行いました。また、石川県士会と本会との情報交換会を、今後も定期的に開催することを確認しました。
  現在、発災から1年以上を経過し、一区切りの感がありますが、やはり復興には時間がかかります。本会としても、石川県士会や士会員の方々への支援をこれまで通りに継続し、共に前へ進むことをお約束いたします。

((一社)日本作業療法士協会長・災害対策本部長  山本    伸一)