機関誌『日本作業療法士協会誌』

令和6年能登半島地震 支援企画の中間総括

支援企画No.1「被災経験のある士会員と石川県作業療法士会役員との情報交換会」

【支援概要・結果】
 石川県作業療法士会役員から、東日本大震災や熊本地震で被災した県の士会との意見交換等を希望する声があり、この要望に応える企画を支援企画No.1「被災経験のある士会員と石川県士会役員との情報交換会」としました。
 今後の士会運営や会員支援に見通しをもって取り組めるような支援が必要であること、発災後1ヵ月時点で心理的なサポートが必要であることに加えて、石川県士会役員自身が疲弊しており士会員への支援に注力できていない状況でした。
 この状況の解決策として、被災経験のある士会との情報交換会を開催し、石川県士会の今後の事業活動の方向性を定める一助とし、同県士会役員の負担軽減を図りました。
【支援活動の成果・評価】
 第1回の意見交換会(Web開催)は2024年4月4日に開催され、岩手・宮城・福島・静岡・熊本県士会から13名、石川県士会から19名、協会関係者が7名参加しました。さらに、第2回(Web開催)が5月27日に開催され、石川県士会から12名、宮城県士会から3名、岩手県士会から2名、協会関係者から6名が参加しました。被災経験士会を含めたこの会合、単なる情報交換の場に留まらず、石川県士会の孤立感を防ぎ、災害対策に向けた連帯感を醸成するうえで大きな役割を担うこととなりました。
 以降、第3回は開催されていませんが、第2回終了後のアンケートで「必要に応じて不定期に開催」を望む声が81.3%に上っており、今後も開催する時期を検討しています。

支援企画No.2「石川県士会員向け説明会の運営サポート」

【支援概要・結果】
 石川県士会役員が本務と災害支援にと多忙な状況に置かれているなか、石川県士会員に向けて支援協力について説明会を開催する必要がありました。そこで、石川県士会役員と協力して、説明会の運営サポートを支援企画No.2としました。第1回石川県士会主催の説明会は、2024年2月15日に開催することができました。
 また、支援企画No.3の士会員向けアンケートおよび災害対策課員等から、災害支援にかかわる会員に対して「こころのケア」に関する情報提供の必要性(要望)があるとの意見が挙がりました。加えて、YouTubeの宮城県公式動画チャンネルでアップされている「おぼえておいてほしい災害時心のケア知識」がわかりやすいとの情報提供がありました。そこで、支援企画No.2の活動の一環として、動画制作者に使用許諾を得て、支援企画No.6による「特設サイト」に掲載しました。
【支援活動の成果・評価】
 第1回説明会の開催後の振り返りでは、会員が気持ちや悩みを吐露できる場等、目的別に開催する必要があるとの声がありました。第1回を開催して以降、開催の機会が得られていませんが、平時から災害支援についてするべきことを準備し、その内容も含めて今後の士会内部での体制づくりにつなげる必要があると考えています。また、被災後2ヵ月目?3ヵ月目を目安に、被災者も支援者も「災害時のこころのケア」として介入が必要なこともわかりました。このため、今後は災害支援に対する専門性の確立に向けた研修体制、協会による有識者の動画や配布ツールの制作等を検討しています。

支援企画No.3「石川県士会員の被災状況の再調査」

【支援概要・結果】
 発災時に安否の確認や被害の状況等を把握することは、初動における重要な作業です。石川県でも、士会員に対して発災直後の1月1日にオープンチャットでGoogleフォームを配信して、いち早く安否の確認を行い、引き続いて1月3日には被災状況の確認も実施していました。その後、石川県士会と本会との協議のなかで、支援の要否や現時点での生活や業務への影響の有無、協会や士会への要望、県士会からのお知らせ(市町での支援制度等の手続き一覧、相談窓口アドレス)等について整理し、発災3ヵ月後の状況調査(再調査)として実施しました。回答数は271名/791名(回答率:34.3%)でした。
 この再調査の結果分析を行い、支援企画ごとに分掌しました。支援企画の実施後、再調査の結果から見て取れた石川県士会員からの支援の要望が支援企画と合致しているかを確認し、不足のある支援の要望については新たな支援企画立案の根拠としました。また、地域ごとの分析を行った結果、金沢市周辺の回答が多数で、被害の大きかった能登地域からの回答は少ないことが課題となりました。
【支援活動の成果・評価】
 再調査の結果を基に支援企画の根拠として利用できたかを確認し、3月31日に本部長が石川県を訪問した際に石川県士会内で再調査の結果が共有でき、その後の東川石川県士会会長が能登方面の会員を訪問する等、被災地への支援を検討する一助になりました。
 調査の分析は各支援企画の根拠となり、早急な分析が求められます。一方、分析する内容や数は、その作業スピードを左右します。今後、調査の内容により多くの自由記述式等の分析が必要となれば、適切な統計処理のソフトやツールを使用すべきと考えます。今後、共通の調査フォームを予め準備しておくことも課題です。

支援企画No.4「協会員向け相談窓口の設置」

【支援概要・結果】
 会員向けの相談窓口として、本会のホームページ特設サイト上に本会から発信する情報を整理・一括掲載し、会員からの問い合せ用のメールアドレスを公開しました。
相談内容は、勤務先が被災したことによる会費免除の可否についての問い合せが1件ありました。そのほかの問い合わせの多くは、JRAT関連のものでした。
【支援活動の成果・評価】
 ホームページにわかりやすいように特設サイトを設置することで、会員に必要な一定の情報提供ができたので問い合わせが不要になったこと、これにより会員から直接問い合わせすることが少なくなったと考えています。ただし、会員が必要とする情報はどのようなものであるのか、もう少し幅広く広報や迅速な周知が必要だったか等の課題もあります。また、石川県士会で対応した相談がどのような内容や頻度だったか、そのなかで本会が対応すべき案件がなかったか等についても整理と確認が必要です。
なお、引き続き相談窓口は公開しており、災害に関して中期的・継続的に対応します(ot-saigai@jaot.or.jp)。問い合わせ等があれば、ご活用ください。

支援企画No.5「協会員に向けた情報提供・情報発信」
支援企画No.6「協会員に向けた情報提供特設サイトの設置」

【支援概要・結果】
 ①支援企画No.4と併せて、情報提供特設サイト「令和6年度能登半島地震関連情報」を協会ホームページ内に設置しました。特設サイトの内容は以下の通りです。
 ・会費免除申請の受付
 ・支援金の受付
 ・会員への相談窓口
 ・協会災害対策本部の動き
 ・厚生労働省からの通知
 ・その他関連情報(報酬改定関連情報、災害時のこころのケアについて~動画資料のご紹介~)
 ②本誌第143・144合併号(2024年2月15日発行)では、被災地へのお見舞いとともに特設サイトを紹介しました。
 ③全会員、被災地会員へ向けた会長メッセージ等を、会員の登録メールアドレスに配信しました。
【支援活動の成果・評価】
 引き続き、特設サイトは開設しています。今後、本会の災害支援ボランティア登録制度を活用して、作業療法士の派遣が必要となった際の情報提供等にも活用できるよう検討を進めます。

支援企画No.7「石川県士会の会員への情報伝達手段に関する支援」

 石川県士会が士会員との間で効率的な情報伝達体制を確立できるよう、本会の連絡システムのほか、他士会で運用されている連絡ツールを調査し、そのなかからメール連絡網サービスの「マ・メール」を提案しました。石川県士会での検討の結果、本会の連絡システムを活用することとなりました。
 今のところ石川県士会からメール発信を代行する案件はありません。本会からは、被災地の会員へ向けて会費免除や免除範囲の変更等を含めて計4回のメール配信しました。
【支援活動の成果・評価】
 今後は、会員管理システムのリニューアルが完了すれば、士会のシステムで該当する所属する会員宛のメールアドレスを確認ができるようになるので、士会でメールの配信も可能となります。このように、会員のメールアドレスの把握等の双方向の連絡手段の確立が重要であり、平時からメールアドレスの把握・収集等に努める必要があります。

支援企画No.8「石川県士会役員と協会災害対策本部員による対面課題整理」

【支援概要・結果】
 2024年3月31日に石川県内にて対面会議を開催しました。本会からの議題として、各支援企画の内容確認、支援金の用途、支援企画No.3の調査結果、会員の「こころのケア」について等を提示しました。石川県士会からは、能登半島地震への対応について全体的な報告がありました。
【支援活動の成果・評価】
 対面会議を経て、石川県士会員の被災状況やさらに被災による疲弊の深刻さ、離職・退職といった問題等、石川県士会の問題・課題の共有と理解が進みました。これにより、災害対策本部の支援企画の整理を進めて、本会と士会間の連絡体制の強化につながったと考えています。
一方で、被災後の慌ただしい状況のなかで、対面会議のタイミングや頻度を考えることはさまざまな要因があり、今回の開催時期が適切であったかについては、十分な評価・検討が必要だと考えています。