機関誌『日本作業療法士協会誌』

石川県の現状――復興リハビリテーションについて

 発災から1年が過ぎ、このような企画をいただいたことに感謝し、現状報告とお礼を申し上げます。
 現在、石川県の復興リハビリテーションは県リハビリテーションセンター(以下、県リハ)が主導する「復興リハビリテーション支援事業」に基づいて進められています。本事業の目的は、被災した自宅や仮設住宅で閉じこもりがちな被災高齢者に対し、活動量低下や生活不活発病、要介護状態になることを予防することです。被災地の病院のリハビリテーション専門職と県リハ職員が中心となり、①仮設住宅での介護予防活動、②仮設住宅の改修や福祉用具導入等の住環境改善、③地域ケア会議への助言や人材育成支援に取り組んでいます。特に①では、震災後に設けられた1.5次避難所の経験を活かし、避難者の活動の賦活を図ることを目的にアクティビティセンターを設け、身体活動、手工芸やゲーム等の机上活動(脳活プログラム)を実施しています(写真1)。
この機能を有するセンター開設には、高齢者への対応、種々の障害への対応、行政等との連携を速やかに適切に図ることができる、経験豊富なスタッフ、そして能登の地理に詳しい方が求められました。また、活動が平日の日中となることから、一般病院・施設に勤務しているスタッフが応需することは難しいといった制約がありました。今回は、能登地区で地域リハに携わっている方、県士会事務局員(作業療法士)、学校養成施設教員の方に依頼するかたちでこの対応に当たっています。
 アクティビティセンターは将来的に、住民主導型運営のかたちに変えていく必要があるでしょう。このお手伝いも進めているところであり、目下数ヵ所で住民主導型運営への移行に取り掛ることのできるセンターが生まれつつあります。
 ②の住環境改善は、1月時点で輪島市、穴水町、能登町、志賀町で完了し、残す珠洲市、七尾市においても2月上旬に完了の見通しが立っています。
このほかに県士会独自の活動として、高齢者がスマートフォンやビデオ通話等に触れるサポートを、中高生のボランティアに担ってもらう事業を展開しています(写真2)。これは発災前より士会事業として実施していたものではありますが、これを能登地区、被災者の方への支援として活用していきます。10月以降、能登地区で2回、金沢市にて避難住民を対象に2回の計4回を開催しており、今後も継続していく計画です。
 復興の現状は以上になりますが、最後に、全国からの多くの支援(マンパワー、物資、義援・お見舞い金、励ましのお声)、協会の応援により1年が経過したことに、心から感謝申し上げます。

((公社)石川県作業療法士会長  東川 哲朗)

写真1 アクティビティセンターでの机上活動の様子

写真2 中高生と高齢者の交流会イベントの様子