災害対策のこれから
東日本大震災は多くの会員、国民に衝撃を与え、本会もその支援にかかわるとともに常日頃からの取り組みと発災有事に備えた「大規模災害時支援活動基本指針」を整備し、昨年8月には改正をしました。東日本大震災以前にも阪神淡路大震災(兵庫県:1995年1月17日)等の数多くの災害に都道府県作業療法士会がその支援や復旧・復興に取り組んできていることを忘れてはならないところです。
2024年1月1日に発災した令和6年能登半島地震に対する本会の対応については、災害対策本部の設置、支援企画の立案と実行等を報告してきました。
本会の支援活動は、被災した士会、そして会員の皆様との連携を基盤としています。当然ですが、士会、会員の皆様も被災しており、ご自身の生活が不安定ななかで、会員の安否確認とその支援や士会活動の継続、そして地域住民への支援活動等、さらに協会との連携という負担を強いることになります。しかし、士会との連携基盤がないなかでは、本会の会員の皆様への支援、そして何よりもその地域にお住いの国民(住民)の皆様が安全、安心した生活を送るための作業療法を提供する環境を後押しすることができません。今回、石川県士会の役員の皆様、会員の皆様にこの場で改めてお見舞いを申し上げますとともに、本会の災害支援活動にご理解ご協力を賜りましたことに感謝申し上げます。
本会としては、各都道府県の災害対策担当者の情報交換会を定例化するとともに、本会と士会の連携だけではなく、士会と士会間の連携、特に災害支援の観点からは「ブロック」とともに「ブロック間」「都道府県士会間」の近隣との連携をどのように進めるかを課題と考えています。また、会員一人ひとりの災害支援に対する知識や技術の向上のための研修会のあり方を再考し、「災害時の国民へのより良い作業療法の提供」が可能となるよう、「災害支援ボランティア」の活用に取り組む必要があると考えています。
むすびに、災害に対しては普段(平時)からの準備と発災時の初動が重要です。本会では、支援活動やその内容を絶えず見直し、臨機応変に、かつ柔軟、そして即時対応ができるように努めてきましたが、今後に向けてはさらなる見直しが必要と考えています。このため、現在、「大規模災害時支援活動指針」の改定作業を進めています。災害は「他人事」ではなく、「『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をも創っていく社会」(地域共生社会)に通ずるものであると考え、会員の皆様の日常生活や臨床実践の一助としていただければ幸いです。
((一社)日本作業療法士協会 災害対策担当理事 小林 毅)
災害支援研修会の模様(2019年度)。本会では、都道府県士会の災害対策に関連する担当者も交えて、情報共有等も含めた研修会を継続的に開催しています
熊本県美里町で行われた「福耕祭」の模様(2017年)。熊本県作業療法士会が実施した「福耕プロジェクト」に本会が連携し、同イベントを開催しました