2025年度重点活動項目 解説
I.地域共生社会5ヵ年戦略関連
1.作業療法士による都道府県地域事業参画に必要なマネジメント手法の定着・運用と市町村担当者の活動支援と配置促進(地域社会振興部)
2.地域で活躍できる作業療法士を育成するための研修システムの構築(教育部・地域社会振興部)
3.療養・就労両立支援指導料の相談支援加算における作業療法士の職名追記の要望(制度対策部)
4.精神科入退院支援加算における作業療法士の職名追記の要望(制度対策部)
5.認知症のリハビリテーションにおける作業療法士の実践の推進(制度対策部)
6.疾患別作業療法の評価およびプログラムの ICF による可視化と実践の推進(学術部)
【解説】
1: 地域共生社会に作業療法士が寄与できることを国民に認識していただくために、都道府県およびすべての市町村への配置は重要な事業です。作業療法士による都道府県地域事業参画に向けて、2025年度は、本会が提示したマネジメント手法を参考に47都道府県作業療法士会それぞれでマネジメント手法の定着・運用を目指します。市町村担当者が活用できるツールを整備し、役割遂行に必要な技能習得の機会を提供することで、すべての都道府県で60%以上、全国総計で70%以上の市町村に担当者を配置します。
2:領域にかかわらず作業療法士が地域で活躍できるようになるためには、卒前・卒後を通じて一貫した教育が必要です。今年度は、厚生労働省と次期指定規則改正に関する情報を共有し、卒前・卒後教育の一貫した教育体制のあり方を提示します。
また、今年度から生涯教育制度に代わって生涯学修制度が開始されます。登録作業療法士制度が新設され、現行の認定・専門作業療法士制度と連動していきます。この制度を教育部と地域社会振興部士会連携課が連携を強化して推進し、地域で活躍できる作業療法士を育成するための研修システム構築を目指します。
3:医療機関から企業や就労支援機関等への連携実践を基に、療養・就労両立支援指導料の相談支援加算の算定職種への作業療法士の職名追記を要望していきます。そのため、2023年の事例集積と周知を経て、2025年には実践の成果に基づき、要望につなげることで完結させる必要があります。
具体的には診療報酬の要望として、療養・就労両立支援指導料の相談支援加算(50点)の算定職種に作業療法士(リハビリテーション職種)を追記するよう要望することを検討します。さらに、制度対策部医療課が取りまとめた根拠報告と実践報告から要望書を作成し、関連団体との渉外活動を展開します。なお、相談支援加算の算定には両立支援コーディネーター養成研修(無料:Web研修)の修了要件があります。会員の皆様にこの研修の積極的な受講を促し、準備を進めていきます(現在、作業療法士の修了者は3%)。
4:新たに「包括的支援マネジメント」を多職種・多機関協働のツールとして活用することが、地域移行に関する精神科地域包括ケア病棟や精神科入退院支援加算に義務付けられました。この「包括的支援マネジメント」における精神科作業療法のあり方を取りまとめ、会員の皆様への周知と積極的実践を促していきます。
具体的には、次の5点です。
①精神科作業療法計画作成研修会にて「包括的支援マネジメント」の研修実施
②新設の精神科包括ケア病棟および精神科入退院支援への関与実態把握
③新設の精神科包括ケア病棟および精神科入退院支援における精神科作業療法指針の取りまとめ
④精神科意見交換会にて、作成した精神科作業療法指針を会員に周知するとともに、精神科入退院支援への関与促進
⑤国に対して、次期改定に向けた退院支援における作業療法士の役割の提案
5:認知症施策推進大綱では「認知症の人に対するリハビリテーションについては、実際に生活する場面を念頭に置きつつ、各人が有する認知機能等の能力を見極め、最大限に活かしながら日常の生活を継続できるようにすることが重要」(以下、認知症のリハビリテーション)とされています。これを踏まえて、令和6年度介護報酬改定では、認知症のリハビリテーションを推進する観点から、認知症の方に対して、認知機能や生活環境等を踏まえ、応用的動作能力や社会適応能力を最大限に活かしながら、当該利用者の生活機能を改善するためのリハビリテーション実施を評価するため、訪問リハビリテーションに「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」が新設されました。社会保障審議会介護給付費分科会では、訪問による生活行為に焦点化した作業療法が認知症の人の生活機能を維持・改善し、介護家族の負担軽減を図るうえでも効果的であるとしたデータ(本会が提供)を基に議論していただきました。今年度は、有効性の高い認知症のリハビリテーションの手法について関係職種への普及啓発を図り、大綱にある「認知症の人ができる限り地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現」に作業療法士が寄与することを目的とします。
今年度は、認知症にかかわる以下の2つの事項に取り組みます。
1)医療と地域の中間事業所として位置付けられている介護老人保健施設、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションにおいてスムーズな地域移行を進めるために、生活行為向上リハビリテーション実施加算、認知症短期集中リハビリテーション実施加算等、作業療法士が重要視している加算算定率を高めるための周知を図ります。
2)①認知症リハビリテーション実践プロトコルのガイドラインの作成
②会員向け認知症リハビリテーション実践プロトコルの周知
③訪問リハビリテーションにおける認知症短期集中リハビリテーション実施加算の実態調査
④認知症リハビリテーション実践プロトコルを関係学会・団体に周知
⑤作業療法士養成教育への提案
6:作業療法の学術的基盤を整備するため、疾患別の作業療法の評価およびプログラムをICFに基づいて検証します。2024年度は7つの疾患において、作業療法でアセスメントすべきICF項目について、医師を含めたエキスパートパネルへの調査に着手しました。続く2025年度は、それら7つの疾患のICFに基づく作業療法アセスメントセットを確定します。加えて、ICFに基づく疾患別作業療法アセスメントセット活用の手引きを作成し、実態調査を行います。また、疾患別の作業療法の介入手法について、各関連学会・団体と連携して検証会議を行います。そのうえで、ICFに基づく疾患別作業療法アセスメントの会員への効果的周知を行い、臨床実践を推進します。
II.組織力強化5ヵ年戦略関連
1.卒前卒後の学びの場の充実による入会の促進(教育部・組織率対策委員会・総務部)
2.小・中学生を含む次世代および、保護者や教職員に向けた作業療法の広報媒体の活用促進(制作広報室)
3.台湾・韓国の作業療法団体との協定事業の推進による、国際的プレゼンスと国内外の会員同士のつながりの強化(国際部)
【解説】
1:学校養成施設在学中に本会への意識向上を図るため、学生を対象とした教育教材を提供します。さらに、卒後の新規入会者には、生涯学修制度を通した学びの場を提供していきます。
また、女性会員の割合が高い本会の現状を踏まえ、調査結果を基に女性が生き生きと「輝く」ことができるための支援を行います。具体的には、産休や育休を経ても円滑に復職できる等の身分保証を促進する学びの場の構築です。また、男性会員に対しても現場のニーズに沿った学びの場を支援します。本会の調査から、キャリアアップや仕事効率の改善等に関する支援も重要であることが明らかとなっています。これらの取り組みでは研修会による対面学修だけではなく、オンラインプラットフォームの活用も必要です。対面のみならず、オンラインでの学びの充実も図っていきます。
2:2024年度までは、作業療法の啓発として「作業療法の説明スライド(オーティくんversion)」「パンフレット『作業療法ってなんですか?』オーティくんversion(小中学生向け)」「作業療法見学ツアーのシリーズ化」、子ども領域の作業療法啓発強化として『その子らしくいきいきと-発達を支える作業療法士-』の映像等の制作と周知を行ってきました。これらを踏まえ、2025年度は都道府県作業療法士会や学校養成施設での活用状況を調査し、今後の広報媒体と啓発活動を見直しつつ、活用促進を図ります。
3:海外の作業療法関連団体との各種交流・協力事業の実施を通して、 国際連携を強化するとともに本会の国際的プレゼンスを高めます。これにより、国内および国外の会員同士の交流の促進を図り、国内外において影響力をもつための組織力強化につなげていきます。2025年度においては、特に台湾職能治療学会と大韓作業治療師協会との交流協定に基づく活動を活発化させるとともに、国際レベルの情報を収集・整理して協会事業に反映する体制の構築を図ります。
III.特別重点項目関連
1.5歳児健康診査における事例集の発刊とそれを用いた作業療法士の参画の推進(制度対策部)
2.大規模災害時支援活動基本指針および、関連諸規程の改定と周知(地域社会振興部・総務部)
【解説】
1:令和5年度補正予算にて「1ヵ月児」「5歳児」の健康診査が予算化されました。これを受け、各自治体での実施が広がっていきます。特に5歳児健診の目的として、社会性発達の評価、発達障害等のスクリーニングといったことが挙げられており、作業療法士の参画が大きく期待されています。こうした動きに対応すべく、2025年度は実態を把握したうえで、5歳児健康診査における参画状況の事例集を編集・発刊するとともに、5歳児健康診査実施に係る会員向け技術研修を開催し、当該事業への作業療法士の参画を推進します。
2:昨年1月に発災した能登半島地震やその後も発生したさまざまな災害の被災者支援を通じて、大規模災害時支援活動基本指針および関連諸規程を見直す必要性が見出されました。発災は予測困難であり、災害とそれによって引き起こされる被害は多岐にわたります。多様かつ多発する災害に対応すべき内容を検討することは喫緊の課題であるため、2024年度は、現在の「大規模災害時支援活動基本指針および関連する規程、内規」を改訂し、備える体制を構築し、検討を開始しました。2025年度は、将来的に必要となる災害対策関連の基本方針、行動指針、マニュアルや関連する規程等を抜本的に見直し、改訂して周知を図ります。