機関誌『日本作業療法士協会誌』

2024年度 日本作業療法士協会及び 都道府県作業療法士会48団体連携協議会 第2回協会長・都道府県士会長会議 開催報告

この記事は、機関誌151号(2024年10月15日発行)のTOPICSのWeb版です。

 2024年9月21日・22日、東京都・TKPガーデンシティPREMIUM東京駅日本橋ホール6Cにて、日本作業療法士協会及び都道府県作業療法士会48団体連携協議会(以下、よんぱち)の第2回協会長・都道府県士会長会議が開催されました。第1回協会長・都道府県士会長会議はWeb開催ですが、第2回会議はハイブリッド開催です。今回、現地会場を取材しましたので会議の模様をお届けします。

よんぱちの意義と組織体制

 よんぱちとは47都道府県委員会(以下、47委員会)を前身とする、本会と都道府県作業療法士会との連携を促進するための協議会です。47委員会は協会内部に設置された委員会という位置付けであったのに対して、よんぱちは、協会と士会が「協会員=士会員」を前提に、またそれぞれの役割の分担を明確にしつつ、対等な立場で臨み、作業療法士が直面している課題を共有し、ともに協議し解決を図る合議体であり、協会と士会との間に位置付けられています。
よんぱちの組織体制(図参照)は、本会会長が兼務する協議会長(現在は山本伸一会長)、複数名の士会長が持ち回りで兼務する副協議会長、運営会議を開催し、協議会の運営に関する事項を検討・調整を行う幹事会、事務局(地域社会振興部士会連携課)を中心に年4回開催されるトップレベルの会議で、「協会長・都道府県士会長会議」「協会・士会間の情報・意見交換会」「士会間の情報・意見交換会」が行われます。幹事会の代表幹事は本会の業務執行理事(都道府県士会担当)が務め、各ブロック2名ずつの士会長が幹事を務めます。

1日目は協会から士会へ報告・情報提供

(1)協会長挨拶・報告
 会議冒頭、山本協会長より挨拶と来年度の重点活動項目、災害対策関連、渉外活動等についての報告がありました。
①2025年度重点活動項目の紹介
 来年度の重点活動項目の紹介とそれに関連して新しい生涯学修制度、認知症への作業療法の広報媒体、大韓国作業治療師協会との調印式での模様等が報告されました。調印式の報告では、日韓の作業療法の違いや臨床・研究について相互に交流を進めていきた いといった話をしたとのことです。また、7月に開催された5歳児健診についての研修会について、「各士会には5歳児検診に必要な知識・技術・情報を交換する研修会をやっていただきたい」としました。
②災害関連
 まず災害対策本部(士会・会員への支援)とJRATの活動(避難所への支援)の違いについて説明しつつ、山本協会長は7月以降の本部の活動を振り返って「多地域にわたって頻発する災害への対応の難しさを感じる」と述べました。また、松村祥史内閣府特命担当大臣に要望書を提出し、防災基本計画にJRATが追記されたことや、厚労省よりJRATが感謝状を受けたことも報告しました。
③SCPA-Japan
 SCPA-Japan とは2021年に設立された、脳卒中に対する情報提供・相談支援をより有効に進めるために、関係各団体が組織的に連携することを目的として設立された団体で、本会も社員として参画しています。この団体の事業として、本会は脳卒中相談窓口マニュアル作成に参加しました。昨年度、同団体の支部設立に関する協力依頼を本会から各士会へ発信しており、今回のよんぱちで山本協会長が改めて各士会に協力をお願いしました。
④行政要望と政治活動、渉外活動
「作業療法士の待遇を改善していけるよう、厚生労働省をはじめとして関係機関・団体に働きかけていく」とし、なかでもこども家庭センターに作業療法士を配置していけるように、こども家庭庁と連携していくこと、地域包括支援センターにリハ職の成果をデータ化して、配置を進めていくことを述べました。また、「経済行政運営と改革の基本方針2024」の中に初めてリハビリテーションについて掲載されたことも報告しました。
⑤まとめ
 山本協会長はまとめとして、「作業療法士にしかできないこと、作業療法士だからできることをしっかりと進めていきたい」「組織力強化を図り、渉外活動を進めていきたい」「協会だけでは現代の課題には対応できない。協会、士会、市町村が緊密に連携していきたい」と述べました。

(2)災害対策本部 災害対策室・連絡調整室
 災害対策本部災害対策室・連絡調整室からは小林毅本会理事がZoomで登壇し、大規模災害時支援活動基本指針の改定について解説しました。本誌第150号(2024年9月15日発行)に詳細を掲載しましたが、改めて士会と共有し、士会のネットワークを活かして素早く、きめ細やかに会員を支援できるよう求めました。

(3)災害作業療法検討推進委員会
 災害作業療法検討推進委員会からは清水兼悦本会常務理事が登壇しました。「災害対策=JRAT」と思われがちですが、JRATはあくまでも医療救護活動を行うものと再確認しつつ、本会が取り組むべき課題は急性期後の生活再建であり平時対策であると述べました。士会を対象とした平時対策について調査を行ったところであり、年内に調査結果をまとめて共有したいとしました。
 
(4)新生涯学修制度の広報に関して
 新しい生涯学修制度については、竹中佐江子本会理事・教育部長から本誌での連載「2025 年4月から新生涯学修制度がスタートします! ~選ばれる作業療法士になるために~」のほか、プロモーションビデオを制作していることを報告しました。また、同制度の前期研修・後期研修それぞれで要件とされている「実地経験」について、「一人職場」で働く会員も多い現状を鑑み、メンターのマッチング制度を検討していることを説明しました。メンター制度創設に向けてのアンケート調査への協力をお願いしました。
 
(5)地域保健総合推進事業
 地域保健総合推進事業については、清水常務理事が令和5年度事業のまとめを報告しました(詳細は本誌第147号〈2024年6月15日発行〉p.30~32参照)。令和6年度の計画としては、作業療法士と理学療法士が地域の成人保健事業や健康増進事業の場で活用されることを目指して、令和5年度事業で作成した手引き等を活用したり、これまでの実践例を参考としたモデル事業の作成等に取り組んでいくとしました。

(6)「協会員=士会員」実現に向けた検討委員会
 「協会員=士会員」については、香山明美本会副会長より「2027年度の実現に向けて鋭意進めている」と報告されました。
会員情報の突合作業は45士会が完了しましたが、その結果、士会員の協会加入率が92.5%に上るのに対して、協会員の士会加入率は80.2%に留まったことがわかりました。本誌での広報や士会未入会の協会員に対して通知を発信する等して入会促進を図るとしました。
 方策案の回答状況は44士会で、必要な士会とは個別相談する場を設けるとのこと。香山副会長は「突合作業が完了した士会は、現行システムを導入してもらいたい。そこから新システムへの課題も抽出できると考えている」と述べました。

(7)組織率向上に関する検討・意見交換
 組織率対策委員会からは、多くの会員の意見を効果的かつ効率的に集約しうる職域代表者と協会・士会が連携し、双方向的に課題や情報を共有し、解決を図る体制づくりを図るべく、よんぱちをプラットフォームにとして事業を進めたいという提案がなされました。
 この提案についてGWが行われました。職域代表者との連携事例について、静岡県士会が行っている施設代表者会議では会員・非会員に限らず代表者を有償で招聘しているという静岡県士会の事例や、県内を東部・西部で分けて周知会を定期的に実施しているという香川県士会の事例も報告されました。さらに、士会から協会への要望として、「協会の紹介については、協会がコンテンツを用意してくれると助かる」「協会・士会の情報交換プラットフォームは必要だが、地域の特性があるのですべての情報が有効とは思えない。取捨選択できると助かる」といった声がありました。

(8)協会基本理念に関して意見交換会
 今年度、基本理念が創設されましたが、谷川真澄本会常務理事が改めてその経緯を説明しました。組織強化の課題として、基本理念を浸透させ、インナーブランディングを高める必要があるとし、そのために説明する機会を設ける、研修会を実施する、協会~士会のインフラの活用をする、人事評価制度に取り入れる、浸透度をアンケート等ではかるといった方向性があると述べました。
 GWでは、「組織マネジメント、組織強化の観点から始まり、協会が策定した基本理念が都道府県士会の活動で現在、何か影響が出ている(出そうな)部分はありますか?」「基本理念を活かして新たに士会で実施しようとしていること、協会と共同して何かできそうなことはありますか?」というテーマで行われました。これに対して、士会からは「今のところ影響はない」「特に影響は出ないのでは」といった反応でしたが、基本理念の普及については、動画等の媒体の活用、MTDLP等、協会のツールの活用、学校養成施設に対しての説明等が方法として挙がりました。

会議冒頭で挨拶を述べる山本伸一協会長

2日目は士会から協会へ、士会同士の情報交換

(1)「誰もが主役 多様な協会へ」推進チーム
 2日目冒頭は、「誰もが主役 多様な協会へ」推進チームの高橋香代子本会理事が、クオータ制を改めて紹介しました。11月に公示される役員選挙からジェンダーに着目した候補者クオータ制が導入されますが、それに際して、「周りに立候補に迷っている人がいれば後押しを」と高橋理事は訴えました。

(2)協会事業と士会事業の連動
 2025年度の協会重点活動項目を周知し、士会の事業計画の参考にしていただくことや協会事業と士会事業との連動について課題を整理し、今後の連携に活かすという目的で「2025年度重点課題項目についてのご意見」「2025年度重点課題項目を踏まえて、都道府県士会での事業計画や取組強化について 」「協会の重点課題項目以外で都道府県士会が自身の組織課題として考える重点項目」についてグループで議論されました。
 士会からの意見としては市町村への作業療法士配置に対するものが目立ちました。「配置する時、既にいる担当者や他職種、都市部と地方の違い等に配慮する必要があると感じた」「担当者ががんばって取り組んでも、行政に相手にされないことも考えられる。政治力も重要」といった声が上がりました。そのほか、「退会者増については、ライフステージの変化に伴う退会に対する復会制度の工夫や、作業療法の楽しさ・魅力を伝える卒前・卒後の取り組みが必要」「JRATの活動のなかで、避難所から作業療法士に対して専門的な支援を望む要望が少なかった。作業療法士の専門性をもっとアピールしなければならない」「士会のなかで学生と一緒に活動できる機会、学生が主役になるような活動もあったらよい」等、さまざまな意見が出ました。こうした士会からの意見・要望に対して、島崎寛将本会理事は「ここで挙がった意見を受け止め、理事会で反映していく」と応えました。

(3)組織マネジメントについて
 士会間での情報交換プログラムとして、組織マネジメントについて議論されました。沖縄県士会と茨城県士会がそれぞれの組織マネジメントの工夫を発表し、そのうえでグループワークが行われました。沖縄県士会は圏域ごとの支部体制を、茨城県士会はコミュニティディレクター制度を紹介しました。

 グループワークでは「各士会での組織マネジメントに関する情報交換」「各士会において今後どのような組織マネジメントが重要になっていくか」「協会と都道府県士会、同じ職能団体全体としての組織マネジメント(連携、役割分担等)に関する意見」が話し合われました。士会からは、事務局の強化や負担軽減、財務体制の工夫等の必要性が挙げられ、その前提として「協会員=士会員」の実現も強調されました。

グループワークの様子