作業としての障害者スポーツ
一般社団法人日本作業療法士協会は、2018年4月から2022年3月までの期間、特設委員会として「障害のある人のスポーツ参加支援推進委員会」を設置しました。
当委員会は、競技としてのスポーツに限定せずに、さまざまな場面における運動・スポーツに関わる「作業」を支援することに取り組みました。上の絵で示すように、子どもからお年寄りまで、障害のある方がスポーツに関わる活動場面は多岐にわたります。2022年4月以降も、障害がある方の運動・スポーツの機会において、作業療法士が担える役割についてより深く考えるヒントとなることを期待して、会員の皆様に障害者スポーツと作業療法に関する情報を随時提供してまいります。
なお、このページに掲載されているすべての情報は会員への情報提供のみを目的としており、掲載されている作業療法士個人の活動、障害者スポーツクラブ・チーム・団体の運営等に本会は関わっておりません。また、すべての資料・URLは掲載許諾を得て紹介しております。
委員会で作成した動画・リーフレット
委員会では会員に障害者スポーツの多様性を伝え、広い興味と関わりをもってもらいたいという想いから、動画とリーフレットの作成に取り組みました。使い方は簡単、作業療法士と対象者が一緒に動画を見て、リーフレットにある3つの質問に答えます。対象者の過去の運動・スポーツ経験や性格を一緒に振り返り、日常生活のなかに色々な形で運動・スポーツを取り入れるための対話のツールとしてご活用ください。
会員の取り組み、都道府県作業療法士会の活動
障害者スポーツに携わる作業療法士や、都道府県作業療法士会の活動を紹介しています。
1.会員の取り組み紹介
・機関誌『日本作業療法士協会誌』の当委員会が連載する記事「障害のある人のスポーツへ多様な参加を支援するために」において、委員の活動を紹介しています(2019年8月 第89号 pp.32-33、2019年10月 第91号 pp28-29)。
・協会ホームページ「はたらくことは、いきること」の記事で、国立病院機構八雲病院の作業療法士によるeスポーツの記事を紹介しています。ページはこちらです。
・機関誌『日本作業療法士協会誌』2021年2月 第107号(pp.28-29)、6月 第111号(pp.22-23)では、会員が障害者スポーツにかかわることとなったきっかけや現在の活動内容についてご報告いただきました。
2.会員が携わる障害者スポーツクラブ・チームなど
・協会ホームページ「OTのスゴ技(作業療法士)」の記事で、Friendly Actionの記事を紹介しています。ページはこちらです。
3.会員による東京パラリンピック競技大会の報告
・東京パラリンピックへ同行した2名の会員に、機関誌『日本作業療法士協会誌』2021年7月 第112号(pp.30-31)、8月 第113号(pp.14-15)では各々が競技に関わることとなった経緯、東京パラリンピックへの参加に向けた期待と準備状況について、機関誌『日本作業療法士協会誌』2021年11月 第116号(pp.22-25)では東京パラリンピック競技大会への参加報告をしていただきました。
4.全国障害者スポーツ大会と都道府県作業療法士会
全国障害者スポーツ大会は、2000年まで別々に開催されていた「全国身体障害者スポーツ大会」と「全国知的障害者スポーツ大会」を統合した大会で、国民体育大会終了後に3日間の会期で毎年開催されています。開催都道府県の作業療法士会は他団体と連携しながら、1年以上の時間をかけて、研修会の開催、大会当日のコンディショニングルームの運営などの準備をしています。ここでは取り組みの経験があるいくつかの作業療法士会から提供いただいた情報・資料を紹介します。
1)岩手県作業療法士会(希望郷いわて大会2016)
2016年全国障害者スポーツ大会にあわせ「障がい者スポーツ特設委員会」を設置し、2018年からは事業部の高齢者・障がい者支援委員会障がい者スポーツ班として岩手県の障がい者スポーツ選手を支援しています。大会当日は、精神障害者・知的障害者のバレーボール競技会場、身体障害者・知的障害者のフライングディスク競技会場でのコンディショニングルームの運営(約20名)に携わるとともに、障害区分判定担当者を育成し、陸上競技チーム(約10名)に同行しました。大会後も岩手県障がい者スポーツ協会と連携し、岩手県内の障がい者スポーツイベントの運営や、障がい者スポーツ大会でのトレーナー等の役割を担っています。
岩手県コンディショニングルーム運営マニュアル(資料内の写真は和歌山県士会提供)
2)福井県作業療法士会(福井しあわせ元気大会2018)
大会当日(2日間)は、延べ28名の作業療法士が参加して、精神障害者のバレーボール競技会場と知的障害者のボーリング競技会場のコンディショニングルームでマッサージ、アイシング、テーピングなどを提供しました。
3)茨城県作業療法士会(いきいき茨城ゆめ大会2019)
台風接近に伴い中止となりました。機関誌『日本作業療法士協会誌』2019年12月 第93号(pp.18-19)では、開催までの準備等についてご報告いただきました。
4)三重県作業療法士会(三重とこわか大会2021)
全国のCOVID-19の感染拡大、また三重県での急激な感染者数の増加に伴い、中止となりました。機関誌『日本作業療法士協会誌』2021年12月 第117号(pp.22-23)では、開催までの準備等についてご報告いただきました。
協会では会員・都道府県作業療法士会の活動情報の収集・蓄積に取り組んでいます。
以下URLより、ぜひ会員の皆様からの情報をお寄せください。
https://forms.gle/3LNZKzjmMkiKhWZQ9
研修会、講習会、学会情報
1.協会主催の研修会
「日本パラスポーツ協会公認 中級パラスポーツ指導者養成講習会」を2023年10月21日(土)・22日(日)・11月25日(土)・26日(日)の4日間にわたって開催いたします。日本パラスポーツ協会公認中級パラスポーツ指導員資格を取得するための研修を実施することで、障害者スポーツ協会、障害者スポーツに関わっている人、障害者スポーツに取り組む当事者に作業療法士の存在と役割が認知されるような活動に取り組む作業療法士を育成することを目的としています。
本講習会は4日間すべてのカリキュラム受講をもって修了となります。ぜひこの機会にお申し込みください。
お申込みは会員ポータルサイトからお願いいたします。
2.協会が後援する障害者スポーツ関連学会等
開催予定はありません。
3.全国・都道府県単位で開催される講習会など
今後開催予定の講習会は、日本パラスポーツ協会および各都道府県障がい者(障害者)スポーツ協会のホームページをご確認ください。
1)初級障がい者スポーツ指導員養成講習会
障害がある方のスポーツへの導入を支援し、スポーツの楽しさを伝える役割を担います。初級では18時間以上の講習会を受講します。
2)中級・上級障がい者スポーツ指導員養成講習会
中級・上級にはそれぞれ受講条件があります。地域や都道府県のリーダーとして現場で指導を行ったり、スポーツ大会・イベントの企画立案・運営を通して、地域の障害者スポーツの振興を担います。
日本パラスポーツ協会との協議を通じて、「作業療法士による地域の障害者スポーツへの参画はまだ少ないが、今後作業療法士のさらなる参画を期待していることが明らかとなった」「本会主催の中級講習会を実現できるならば「競技スポーツに限らない、作業療法士ならではの『生活のなかのスポーツ』を取り入れてほしい」「(資格取得に際しては)初級講習会の受講が免除され、作業療法士は身体障害、精神障害等の基礎科目を免除・減数も可能」とのコメントが得られています。そして、日本パラスポーツ協会との協議の結果を踏まえて、2022年4月16日開催の第1回定例理事会において、講習会の開催を前提としたカリキュラム検討へと進むことが決議されました。今後ワーキンググループを立ち上げ、実現に向けて協議を重ねていきます。
3)障がい者スポーツトレーナー講習会
スポーツトレーナーとして質の高い知識・技能および障害に関する専門知識を有し、アスレティックリハビリテーションおよびトレーニング、コンディショニング等にあたる役割を担います。作業療法士にも本資格を有している、または取得を目指して受講中の方がいます。受講条件はこちらをご覧ください。
他団体との連携
1.スポーツ庁
「スポーツ庁令和2年度障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究」の結果から、障害がある方が障害者スポーツを始めたきっかけとして「理学療法士・作業療法士等医療従事者に奨められた」という回答が一定数あることが分かりました。「第3期スポーツ基本計画」(2022年4月~)の障害者スポーツの内容をより充実させるため、今後もスポーツ庁健康スポーツ課障害者スポーツ振興室との情報共有・交換を継続していきます。
2.日本パラスポーツ協会(旧名称:日本障がい者スポーツ協会)
機関誌『日本作業療法士協会誌』2019年6月 第87号(pp.28-30)では、日本パラスポーツ協会の事業を紹介しています。当委員会が都道府県・政令指定都市障がい者(障害者)スポーツ協会を対象に調査を実施した際にご協力いただきました。今後も本会主催の「日本パラスポーツ協会公認中級障がい者スポーツ指導者講習会」の実現に向けて、協議・情報交換を継続していきます。
3.日本精神保健福祉連盟 精神障がい者スポーツ推進委員会
全国障害者スポーツ大会への派遣、各種講演会の企画運営など、精神障害者スポーツの振興を図っています。日本作業療法士協会からも委員を1名派遣しています。委員として参加されている勝嶋氏に、機関誌『日本作業療法士協会誌』2020年4月第 97号(pp.48-49)で精神障害者スポーツについてご紹介いただきました。
書籍、報告書、関連資料
1.作業療法ジャーナル2019年7月号「スポーツがもつ可能性-作業療法への期待」
当委員会の委員も執筆しています。出版元は三輪書店です。
2.「障害者スポーツの振興における都道府県作業療法士会との連携実態調査」報告書
2019年度に当委員会が都道府県・政令指定都市障がい者(障害者)スポーツ協会を対象にアンケート調査を実施いたしました。報告書はこちらです。
協力:公益財団法人日本障がい者スポーツ協会
2019年度実施「障害者スポーツの振興における都道府県作業療法士会との連携実態調査」報告書
3.「平成28年度スポーツ庁『地域における障害者スポーツ普及促進事業(障害者のスポーツ参加における障壁等の調査分析)』」
当該調査報告書では理学療法士・作業療法士の障害者スポーツ領域への参画の重要性が提言されています。
報告書はこちらです。(本文pp.154-155)
お問い合わせ
日本作業療法士協会事務局 障害者スポーツ担当
Email:sports-ot☆jaot.or.jp(☆を@に変更してください)
注:お問い合わせの際は会員番号と氏名を必ずご記載ください。