作業療法士Q&A

精神障害を発症した社員を、障害者雇用に切り替えるべきか?

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若手社員が統合失調症を発症しました。3か月の休職を経て復職予定ですが、障害者雇用率の算定となる雇用(以下、障害者雇用)に切り替えるべきか、一般雇用のままでいくべきか悩んでいます。判断の基準などあるのでしょうか?また、会社としておくべき準備などありましたら教えてください。

精神障害を発症した社員を、障害者雇用に切り替えるべきか?

Q.

 若手社員が統合失調症を発症しました。3か月の休職を経て復職予定ですが、障害者雇用率の算定となる雇用(以下、障害者雇用)に切り替えるべきか、一般雇用のままでいくべきか悩んでいます。判断の基準などあるのでしょうか?また、会社としておくべき準備などありましたら教えてください。

A.

【障害者雇用に関して】
 障害者雇用では、障害者手帳を所持している方の雇用が要件となります。
 統合失調症では精神障害保健福祉手帳を取得できる可能性がありますが、手帳申請は初診から6ヶ月以降となります。初診から6ヶ月経過後も継続して配慮が必要と考えられる場合、ご本人に手帳取得に関する意向を聞いて良いかもしれません。
 今回においてご本人が手帳を取得するメリットは、一緒に働く部署メンバーに継続した配慮・理解を求めやすいこと、と考えられます。また、生活面では公共料金や税金面の優遇処置等があります。
 障害者手帳の取得はデリケートな問題かつ生活面にも関わる問題ですので、支援機関も交えて話し合うことがおすすめです。

【会社としての準備】
 まず第一に、復職に際して会社に求められる配慮を把握する必要があります。今回の場合、以下のような配慮事項が考えられます。

●通院、服薬への配慮
 体調安定のために継続的な精神科通院と服薬が必要です。復職する方でも月1回程度通院する場合が多く、通院時間をどのように確保するか確認する必要があります。
 また、症状を抑えるための抗精神病薬や睡眠薬が処方されることが多くあります。個人によっては、眠気・だるさ等を感じる方もいますので、その場合は勤務時間や業務内容について検討する必要があります。
 さらに、病状悪化のサインを共有しておくと早めの対処に結びつきます。

●障害への配慮
 統合失調症により、作業遂行能力・処理能力・集中力等低下、意欲の低下、周囲の状況を理解することの難しさ等の影響がでることがあります。個人差の大きい事項ですが、発症前と同様の業務が難しくなる場合もあるため、会社としてどの程度まで業務を変更できるか、事前に検討できると良いと考えられます。

●不安感への配慮
 幻覚・妄想等の症状や発症した過程等により、復職に対して不安を感じる方も多くいます。どのようなことに不安を感じ、どう対処していくのか、検討する必要があります。勤務時間・業務内容・社内での相談体制等、会社でできる対処もありますが、病気に関する事や今後の家庭生活等、プライベートの不安を抱えている事も多くあります。その場合は支援機関を利用することが有効です。

 これらはご本人の状況・仕事状況等で大きく変わるため、個別性が高くなります。また、ご本人自身も必要な配慮事項が分からないことも多くあります。復職を検討する段階で、ご本人の了解の下、支援機関(ご本人が通院する医療機関、最寄りのハローワーク障害者窓口、障害者職業センター、就業・生活支援センター、社内の産業医・産業保健スタッフ等)に相談できると良いと思われます。
 社内で具体的な配慮の必要がある場合、現場で一緒に働く方に理解・協力をあおぐ必要があります。現実的に配慮できる環境をどのように作るのか、現場との調整が不可欠となります。さらに復職後に現場での対応に困った際、人事や支援機関に相談できる体制作りが準備できると早めの対処に繋がります。

 復職に関して、適切な情報と丁寧な話し合いが必要となります。支援機関を上手に利用し、ご本人・一緒に働く方とも働きやすい環境作りを検討することが重要となります。

■回答
山口 理貴(一般社団法人Bridge代表理事)