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「暮らしの場」、放課後児童クラブで、育ちを支える

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子ども

川崎リハビリテーション学院・森川芳彦さん
 発達障害児への支援が推進されている。早期の療育がその後の人生に大きな影響を与えるというが、学校などの教育現場だけでなく「生活の場」でも、発達障害のある子どもたちとの関わりの重要性が増している。放課後児童クラブの職員と、作業療法士が連携して、「生活の場」から子どもの育ちを支援する取り組みが、岡山県で行われている。

放課後児童クラブ「二福のびのびクラブ」

 岡山県倉敷市の放課後児童クラブ「二福のびのびクラブ」。倉敷市立第二福田小学校の敷地内に建てられた木造の建物の中で、150人ほどの小学生が、放課後を過ごす。二福のびのびクラブ所長の河北大樹さんは「私が学童保育に携わるようになって7年になりますが、発達障害傾向のある子は増えてきていると実感しています」という。150人ほどの児童のうち、発達障害の診断を受けている子は13人ほど。しかし、職員の感覚で「この子は発達障害の傾向がある」と感じられる児童も含めれば、その数は倍、26人ほどになるという。二福のびのびクラブには4つのクラスがあるが、どのクラスにも発達障害、あるいは発達障害傾向のある子が複数いて、その対応に職員が苦慮するケースも出てきた。放課後児童クラブには、保育士や教員の資格、経験を持つ職員もいるが、職員には特別な資格が不要なため、未経験でこの世界に飛び込む人も少なくない。たとえ保育士や教員の経験があったとしても「学びの場」である学校と「生活の場」である放課後児童クラブでは、子どもたちのふるまいや障害のあらわれ方は大きく異なるという。「現場の職員たちは、障害のある子たちにどう接すればいいのか、迷いがありました」と河北さんは言う。

 こうした状況がある一方で、厚生労働省からは2015年に放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業)を発達障害児の療育の場として重要ととらえ、障害児の受け入れを推進していく方針が示された。そこで岡山県においては、岡山県学童保育連絡協議会が岡山県作業療法士会に協力を依頼し、2016年から一部の放課後児童クラブに作業療法士を派遣し、職員の支援にあたるという取り組みをはじめた。岡山県倉敷市の川崎リハビリテーション学院で講師を務める森川芳彦さんは、全国に先駆けたこの取り組みに当初から参画し、倉敷市をはじめとした岡山県下の放課後児童クラブに通い、支援をすることになった。現場を視察すると同時に、職員からヒアリングを行う。作業療法士は、放課後児童クラブの現場を視察しながら、トラブルを抱えた子どもにどう対応しているのか、関わりによって変化はあるのかなど、担当の職員から課題を聞く。

 森川さんは「私が職員になにかを教えているなんて、とんでもない。ここに通いはじめてわかったのですが、現場の職員は一人ひとり、とてもよく子どもたちを見ていて、たくさんのことに気づいている。そのことに驚きました。私がやっていることは、そんな職員の皆さんを励ますことだけです」。現場の職員は、作業療法士の視点と知識、経験に裏打ちされた評価と対応を知ることで、自信を持って子どもたちと向き合うことができる。「放課後児童クラブは子どもたちにとって生活の場であり、遊びの場。それは作業療法士の得意分野なんです。暮らしや遊びを通じて子どもたちと関わる方法を、職員と一緒に探っていきたい」と森川さん。岡山県作業療法士会では、今後、放課後児童クラブの職員を支援することのできる作業療法士を育成し、この取り組みをさらに広げていくことも視野に入れながら、放課後児童クラブの職員と作業療法士が連携することで、発達障害を持つ子どもたちの育ちを支える仕組みを作り上げていきたいとしている。

■施設情報
川崎リハビリテーション学院
〒701-0192
岡山県倉敷市松島672
電話:086-462-1111

二福のびのびクラブ
〒712-8046
岡山県倉敷市福田町古新田310-2
電話:086-456-6001