人と関わることで、自分も成長する
いずみ記念病院・西村萌々子さん
東京都足立区にあるいずみ記念病院の作業療法士、西村萌々子さん。作業療法士の仕事を通じて、人と関わり、「その人らしさ」と向き合う毎日が、西村さん自身を成長させてくれるのだという。
高校生のころから医療・福祉職の道に進もうと思っていました。当時は作業療法士という職業があることも知らなかったのですが、友達が理学療法士を目指すというので一緒に調べているうちに、作業療法士という職種を知りました。専門学校のオープンキャンパスに参加して、さらに詳しく話を聞いていくうちに、自分には作業療法士が向いているのではないか、と考えるようになりました。私は人見知りではあったのですが、人と話をするのは好きでしたし、なにより作業療法士の「その人らしさ」を大切にする考え方に共感しました。作業療法士になるためには学校で多くのことを学ばなければなりませんでしたが、特に印象に残っているのは、実習の時間です。実際に患者さんと向き合い、関わることで、自分が学んできたことが「本当の知識」になるということを経験したように思います。
今は回復期病棟で、入院患者のリハビリテーションを担当しています。常時5~6人の患者さんと関わっていますが、本当にいろんな人がいるな、と日々実感しています。年齢や病状はもちろんですが、その人がどんな生活を送ってきたのか、これからどうしたいと考えているのか、それぞれに異なる「その人らしさ」と向き合う毎日です。そうした人たちと関わることが、自分の成長にもつながっていると思います。
私が担当した方に脳梗塞で入院されてきた90代の女性がいらっしゃいました。私が関わりはじめた当初は「死ねばよかった」が口癖でした。もしかしたら、深刻な気持ちでおっしゃっていたのではなかったのかもしれませんが、リハビリテーションや退院後の生活に対する意欲が落ちているのがわかりました。その方の趣味が編み物だということが分かったので、リハビリテーションの時間に編み物を取り入れたんです。そうしたら「あなたに編み物を教えるのが、今の私の生きがい」と言ってくださって。それ以降、「死ねばよかった」とおっしゃることはなくなりました。その人と向き合い「その人らしさ」を引き出そうと工夫した結果がうまくいった、私にとって大切な経験となりました。
2015年に入職して今年で3年目になります。回復期病棟でのリハビリテーションについてもまだまだ学ぶべきことが多いのですが、それと並行して、今後はいろいろなことに取り組んでいきたいとも思っています。ありがたいことに今年、学会で発表する機会を得ました。麻痺のある患者さんを担当させていただいたときに、自助具を使って自分で体を洗うことができるように支援したのですが、その事例を上司に評価され「学会で発表してみないか」と提案されました。内容についていろいろな人たちから意見をいただき、発表の準備を通じて自分の考えをまとめることができ、とても貴重な経験になりました。こうした学会発表などの機会も増やしながら、今後はより広い視野で仕事に取り組んでいきたいですね。
■施設情報
社会医療法人社団医善会 いずみ記念病院
〒123-0853 東京都足立区本木1丁目3-7
電話:03-5888-2111(代表)